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文芸を親しみ、交流するいとう岬のサロンです
by msk333
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文芸森樹
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人形・小林とむぼ
徳永 遊
一年に一度 正月の隣組の初寄会で出会う伊吹さんは国鉄を中途退職して栗東トレセンで働いてきた その時に馬にまつわる珍しい話などよく聞かせてくれた
競馬用馬は肥えると使いものにならないので無理に胴体を何カ所か刃物で傷つけそこに塩をこすりつけ痛がらせては食欲を減退させるのだとか 身動きできない型枠の檻の中に入れておとなしくなるように調教するのだとか 乗馬用馬はオチンチンの玉を抜くのだと そやないとイキリ立って乗せさせますかいなと 馬が足を折ったらすぐ屠殺場行きだとか しかもその殺し方が頭、手足を切り落とし真ん中の胴体だけにして機械で圧縮してしまうのだとか その肉は食用にはならない 何故ならば競馬用に薬漬けされているので食べられない 食べるためには六ヶ月間放牧させてから殺す そしたら毒気が抜けるのだとか そして終わりにはいつも「馬に生れたらかなんな可哀相なもんやで」とこう言うのであった
伊吹さんは半年前にそのトレセンを定年退職して年金もらって家でのんびりするようになりこの二月より屋根の瓦をやり直すのでどうぞ皆さん喧しくなりますけれどよろしく願いますと挨拶していた
その伊吹さんがその一ヶ月後急に亡くなられた 痛風と高血圧の持病があったと聞いた 瓦職人さん達が出入りするので釣りにでも行って来ると家を出られその日に車の中で亡くなられてしまった 奥さんもびっくりして涙も出ないと言う
お侮みに行き顔を拝ませてもらったが死後一日経つというのに頬はうっすらと紅潮し口をポカンと開けて呆気にとられた少年のような死顔だった
今日の昼も瓦職人さん達はせわしく出入りし主のいない屋根の瓦を葺いている
蜂クリック
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